この度、石破政権が誕生しましたが、今まで表明していた自説と総理に就任してからの意見が結構異なるので変節したのではと一部で批判が出ています。
特に金融関係では、持論の富裕層への金融所得課税強化や日銀の利上げ路線を支持する意見が誤解され?マーケットの不安を生み、円高株安という「市場の洗礼」を受けました。そこで早速自説を引っ込め、岸田政権の路線を継承することを表明して、総じて言えば「マーケット・フレンドリー」に転換しています。
同じような「市場の洗礼」は、つい最近、日銀も被っています。
それは、8月5日に起きた「令和のブラックマンデー暴落」ですが、7月会合での想定外の利上げが金融引き締め路線への転換と受け止められ、急激な円高と株の暴落の起点となり大いに批判され、その後慌てて火消しに追われました。
この一連の騒動を見て、ある海外の著名エコノミストが「日銀は市場の人質になるな」と評し、マーケットに翻弄された日銀にぶれない様、政策の一貫性堅持をと警告しました。
この様な政府・日銀とマーケットの間に齟齬が生じるのは、コミュニケーション不足が根底にありますが、それ以外にも政府や日銀は、どちらかと言えば、半年~1年あるいは2~5年、場合によっては国家100年の大計という目標もあり、中長期的な目線の目標が多いように感じます。
一方、マーケットは、年金基金やグローバルマクロファンドの様に比較的中長期的シナリオに基づいて運用方針を決定する投資家もいますが、ヘッジファンドのように短期や超短期目線の運用成果を競い合う(1日または時・分・秒或いはコンマ秒単位の利益を求める)投資家も数多く存在します。しかも前者の中長期目線の機関投資家も実際の運用は、日々決断しているため、結果的には、その日暮らしの判断に引きずられやすい傾向があります。
つまり、政府・日銀とマーケットでは見ている時間軸や座標軸が違いすぎて、すれ違いや誤解や過剰反応が出やすいのではないかと感じます。
勿論、マーケットは、金融経済だけでなく外交・安保・地政学リスク等の先行きを総合的に判断して売買し、日々、現在価値と将来価値を決めているので、所謂「経済金融」のプロの意見として重視すべきではありますが、あまり気にしすぎると判断を誤ることにもなり兼ねないのではないでしょうか?
市場が多少動揺したからと言って、直ちに自分の信念となる政策を撤回すると座標軸が揺らぎ、党内少数派の首相としてのリーダーシップに陰りが出ることに繋がるかも知れません。
いずれにしても、人口減少という避けられない国難を抱える中、前神田財務官が「日本は最早大国ではない」と評した通り、現在、日本が先進国グループに居続けられるか否かの正念場を迎えています。
国力の向上が大目標となる中、課題先進国の日本にとって何が国益かを熟慮し、政策の優先度合を明確にし、骨太方針や目標設定にだけに囚われるのではなく、立案した政策の実行度合とその成果検証を意識して行動して欲しいと個人的には思います。