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社内ブログ

円安雑感

  • 2023.09.28
  • 投稿者:バーディー

・今、円安が進行しています。
この円安の起点は、2013年から始まったアベノミクスの3本の矢の一つである異次元の金融緩和「2年で2%の物価目標を達成する」ですが、当時の黒田日銀総裁は、この印象的なキャッチフレーズで一躍スターとなりました。この緩和策は、円安政策としては功を奏し、株高や雇用増に繋がったが、本来の目的のデフレ脱却では余り効果を発揮出来ませんでした。

ところが、今回は、円安政策として効き過ぎて、日米金利差を主因とする歴史的な円安局面を招いて当局は、その対応に苦慮しています。
具体的には、円の総合的な実力を示す「実質実効為替レート」(外国通貨と比べた円の実力を示し、内外の物価格差を考慮した対外的な購買力)が1970年以来、53年振りの低水準となり、円が1ドル=360円の固定相場制だった時代と同水準で、日本の対外的な購買力の低下が鮮明になっています。

この様な状況変化に加え、インフレが長期化する現況に対して、最近では、著名な経済学者(慶応大学教授)からは「政府がデフレ脱却宣言を出して日銀に超緩和策からの離脱をやらせるべき」との意見も出ており、また、立憲民主党の野田元首相も「円安によるインフレで多くの国民が苦しんでいる現況を見れば、日銀が超緩和策を修正し円安を止めるべき」と同様の発言をしています。

これに対し、円安の理由は、日銀の超緩和策だけにあるのではなく、日本の成長力が鈍化したり、海外投資が活発化したりした等複合的な要因があるから、円安対策として日銀に政策変更を迫るのは、筋違いであるという意見も多く、また、今、緩和策を修正してしまったら、デフレ脱却のチャンスを逃しかねないとか、の意見も根強い。

しかし、インフレ率は、1年半も日銀の目標である2%を上回っており、肝心の需給ギャップ(国内の総需要と供給力の差)が、今年の4~6月には、プラスの成っている点や、実質賃金は、2年以上に亘ってマイナスを記録していることなどマイナス面が目立つ状況です。

また、そもそも、潜在成長率が1%未満の日本が2%の物価目標を掲げるのは、潜在成長率=賃金上昇率と仮定すると、いつまでたっても個人の生活水準は切りあがらないとも言え、加えて金融緩和の結果、借入が増えて投資に使われるという政策が実現できない「流動性のわな」に陥っている日本に妥当な政策なのかという意見も多い。
ある外国人投資家に言わせれば、「目標の2%を2年近く上回っているのに、日銀は、物価目標が持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていないとして同じ政策を継続しているのは全く理解できない」と発言しています。

植田総裁は、就任当初に、過去の超緩和策が経済・金融にどの様な影響を与えたのか1年から1年半をかけて総点検すると発言したが、変化のスピードが速い今の時代にじっくり検討する暇はなく、早く点検し、その結果を現実の政策運営に活かすべきではないかと思います(金融政策の専門家と普通の経済人の時間軸が余りにも違い過ぎるのではないか)。

何れにしても、円資産のバーゲンセール状態となっている現状(円安貧乏)と今後人口が減り続けることが確実なことも踏まえれば、そんなに遠くない将来?アルゼンチンの様な、経常収支赤字国に転落することも十分あり得ると考えれば、そろそろ金融政策の正常化に踏み切らないと円安が止まらない事態を招くとも考えられます。
原油輸入率98%や食料自給率が40%しかない中、極端な円安は、主要物資を輸入に頼る日本にとって必要量が確保できないことや買い負ける場面が多くなることを意味しています。

円安で、上場企業の当期業績は、3期連続増益で、史上最高益の企業が4割を占めると予想されており、現在の円安は、インバウンド需要の高まりと超低金利によるゾンビ企業の温存などと共に、実に居心地の良い状態を実現していますが、ぬるま湯に浸かった状態が持続すると、耐久力や地力が減衰し、結果として、国力の低下に繋がり兼ねないのではないでしょうか?

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