ロシアのウクライナ侵略から、ちょうど3週間が経ちました。戦況が長引くと、他国からの経済制裁などでロシア国内の生活は次第に窮乏し、国民の不満が高まり社会不安の要因となりますので、プーチン政権は当初短期決戦を目指していたのでしょうが、現状は思惑とは異なって来ている様です。
今回の戦争は、現ロシア政権の領土的野心やトップの精神の不安定さなどが強調されていますが、物事は何事もそう単純ではありません。一つにはウクライナがEUやNATOに接近し過ぎたことにより、ロシアが安全保障上の懸念を持ち、それを払拭する為の対応であるとも言われていますが、そのまた前段としては、近年のロシアのクリミア侵攻とその併合というのがあり、それがウクライナの安全保障の懸念となった為とも理解できます。結局物事は全て繋がっており、何であっても単純な図式では、善悪は割り切れないということであると考えます。
今回の事変が始まった後、社内の朝礼でもこの事変を取り上げましたが、その際社員の方々に主として申し上げたのは2点です。一つ目はより良い理解とそれに基づく今後の予想並びに不測の事態への備えの為には、より正確でかつ幅広い知識が必要であるという事です。両国の歴史、地理(日本は完全な島国ですから国境という概念が直接的にはなく、苦手な項目です)、人種、言語、宗教などを知るという事です。この両国は、歴史的にも地理的にも深く繋がっており、また人種、言語、宗教もあちらこちらで入り混じり合い影響し合っている、いわば親戚関係です。
二つ目は遠い国の出来事ではなく、自分の事として捉え、色々なことを想定し、考えることが大切であるということです。まずは被災国のウクライナ国民に思いを寄せるのは当然ですが、両国は資源大国でもありますし、各国の幅広い経済制裁がグローバル的かつ波及的に影響を拡げ、日本経済全体は勿論のこと、我々の日常生活にも直接間接多大な負荷をもたらして来るということです。既にエネルギーや穀物などの価格上昇が、我々の生活に影響を及ぼし始めています。
またウクライナからの難民は一日当り10~20万人に達し、既に累計300万人となっていますが、国境を接するポーランドは現在までに200万人近く(人口比較で換算すれば日本だと600万人)、モルドバ(ルーマニアとの間にある国)は、30万人(同じく人口比較換算ならば日本では千万人以上)の難民が流れ込んでおり、各国は人道的見地から宿泊施設の確保や交通手段の提供などの対応に追われていますが、それもそろそろ限界に近づきつつあるようです。
ご承知の様に東アジアにおいても色々な火種がくすぶっています。不測の事態に対してどの様に安全保障を確保しておくか、またたとえ我が国が戦乱の当事者ではなくとも、難民発生の場合にどの様に対応すべきか(コロナ禍と同様に単なる鎖国では、国際世論が許さないでしょう)、我々は自分事として日頃から良く考え、空論ではなく現実論をしっかりと自分達のものにしておくべきであると改めて強く思います。