東京証券取引所の市場改革がこの4月に実施されることとなりましたが、その改革案の評判が芳しくない様です。
現在、日本の上場株式市場は、主に4つに分かれ、東証1部・2部・ジャスダック・マザーズ他となっているが、それを市場の活性化を目指して3つに再編しようとしています。
具体的には最上位の「プライム」(国際的に展開するワールドワイドな企業のイメージ)、「スタンダード」(通常の国内事業が中心の企業)、それに「グロース」(成長力の高い新興企業を中心)の3つです。
その内、プライムは、外国人投資家が積極的に売買する市場との触れ込みになっています。
ところが、現在の東証1部企業約2200社のうち約8割の約1800社がプライムに移行することになりましたが、その内プライムの基準に満たない企業が約300社程あります。
その基準未達企業は、特例扱いとして、将来、基準を満たす計画書を出して認められれば、プライムに残留できる仕組みになっています。いわば経過措置ですが、その猶予期間は、現時点では期限がなく、いつまでに達成すべきか目標がない状況です(ある会社の目標は10年以内となっています)。
元々は、今回の市場改革案により、日本の市場が抜本的に変わり、欧米市場に伍していける体制を構築する意欲的な変革だと目されていたのに、全くの期待外れだとの評価が大半です。
本来、「プライム」に属する企業であれば、グローバルに展開し、海外投資家も含め積極的な売買がなされる企業がその名にふさわしいはずですが、8割のも企業が残留すれば個々の企業の価値は、平均的には中程度の会社ばかりになってしまいます。
ある有力な財界人は、「100社位に絞って、超優良企業だけのプライム市場にして、その他の企業がそれに入ろうと切磋琢磨する仕組みでないと改革効果は期待できない」と主張しています。
この発表を聞いて、まず頭に浮かんだフレーズが、「和を以て貴しとなす」です。
日本で変革を行おうとする場合には、必ずと言っていいほど、激変緩和措置が盛り込まれ、少しづつ変革が行われるが、いつの間にか改革の精神が減衰し、元の状態と大きな違いはないことになってしまう例が多い。
経済学者の竹中平蔵は、競争力をつけるにはどうすればいいのかという問いに対し「それは、お互いに競争することだ」と答えたとされますが、世界中のあらゆる産業で熾烈な競争が行われている中、いつまでも漸進的な改革を行っていると日本は取り残されるのではないかと心配になります。
日本に大変革がもたらされた明治維新や終戦後の高度成長期をみても、産業資本家や事業者が若々しい情熱で寸暇を惜しんで競争したからこそ、大躍進期になったはずです。
確かに秩序だった安定的な社会を築くためには、「和を以て貴しとなす」という理念は貴重であると考えますが、それだけでは進化も深化も覚束ないのではないでしょうか?
組織内で話し合いなるべく穏健な結論を誘導する生活の知恵でありますが、先々を見据えた革新的な考え方や事業変革には程遠い内輪の論理と思われます。
いつまでも「和を以て貴しとなす」では、何れ「百年河清を俟つ」存在になってしまう。
国際競争の場では、寧ろ「和して同ぜず」の精神も必要ではないかと思います。