新たなウィルスによるパンデミックが起きてから2年弱となりました。日本の状況は他国に比べ比較的抑えられたレベルではあり、ここに来て感染者は激減していますが、それでも現在に至るまで、社会全体の機構を揺るがすのに充分な影響をもたらしています。
今回のコロナ禍で社会の在り方は色々と変わりましたが、その中にはこれを契機として、将来に向かって社会の変革へと繋がるものも出て来ています。
即ちデジタルツールの活用など、これから社会全体が柔軟な思考で取組んでいくべき材料が数多くありますが、その際にも我々はあくまでも生物種としての人間であること、そして心を持つ存在であることを念頭に置き、社会の在り方を模索して行かなければならないと考えます。
例えば現在「リモートワーク」が盛んに叫ばれていますが、実は自宅その他の場所でパソコンを主たるツールとして行える人間の活動は社会全体から見ると極めて限定的であり、なおかつそれらはリモートではできないものに依存しているという当り前の事実を忘れてはいけないと考えます。
人間の生活や体の機能は、食べて寝て身体を動かしてこそ成立ちかつ維持できるものですが、食物をつくったり山海の恵みを採取するのもリアルな活動でのみこそ可能ですし、また日々排出されるゴミその他の不要物もそれを回収する人たちが実際に対応してこそ生活空間は清潔に保たれています。或いは生活インフラの整備も、現場で対応する人たちが実際に手足を動かし対応してこそ、日々機能していきます。
また生物種としての人間は自分の身体をまず動かし五感を働かせ、そしてその上で思考を巡らせてこそ、現実的な対応をする事が初めて可能となります。自分の殻に閉じこもり、ただ頭の中で考えているだけでは思考は堂々巡りとなり、視野狭窄が進んで互いの連携は失われ、社会は成り立っていかないこととなります。
SNSなどの世界ではなおさら、ややもすると同じ主張をするものたちだけの集団があちこちにできる形となりますが、そればかりに寄掛かっていると、社会の分断を一層加速する危険性が伴うことにも注意をしなければなりません。
是非この様な時期であるからこそ、今一度人間としての本来の在り方を思い起こしたいものです。絵画や音楽などの芸術に触れて五感を刺激し、人本来としての感性を研ぎ澄ますこと、スポーツや会食などを共に楽しみ(勿論現時点においては、感染防止の為の配慮は必要です)、まずは頭より先に互いの体や五感・感性を刷り合わせる事です。
デジタル化は時代の流れとして必須ではありますが、効率ばかりに関心を向けるのではなく、その前段として生き物としての一人一人の人間、社会の中での個人というものに是非目を向けて、バランスの取れた次の時代を皆と共に築いていきたいものと考えています。