メジャーリーグで今季から採用された、投手の投球間隔の時間制限を行う「ピッチクロック」が完全に定着して来ました。始まる前には懐疑的であった関係者や選手たちも、今では賛成派が多数となっているようです。
週末にMLBのテレビ中継を見ていると、テンポが早いのでちょっと目を離すと、いつの間にか大谷選手の打順が終わってしまっていた等という事が良くあります。
一方この感覚に慣れて来ると、日本のプロ野球のテンポの遅さがより際立って感じられます。こちらの場合は、あるところで席を外して用事を済ませ、10分後に戻って来ると、まだ延々とその場面が続いていたりして「ああ、先に用件を済ませておいて良かった!」と思う事がしばしばです。
近年日本人が持つ悪い癖として、とにかく現状維持を好み、何かを変える事に理屈を付けて抵抗を示すというものがあり、このメジャーでの新ルールに関しても「野球は間のスポーツだ、間を楽しむのが醍醐味だ!」という向きが多いのですが、では我が国で絶大な人気を誇る高校野球はどうなのかと言えば、非常にテンポが良くスピーディです。この高校野球について「間がない」などという野暮を言う人はいないでしょう。
最近はプロ野球観戦の機会も少なくなりましたが、その大きな要因としてあまりにもだらだらと試合時間が長い事が挙げられます。かつて野球場に足を運んだ時も、途中から一緒に行った仲間と野球以外の話を始めて結局試合は殆ど見なくなり、単なるビールの飲み会となってしまうという事がしばしばでした。
近年の日本人のもう一つの残念な性格としては、外からの圧力などでようやく変革を行うが、一旦新しいルールが決まると誰もそれに疑問を挟まずに黙々と従う事です。
以上あれこれと国民の一人として自己批判的な事を述べましたが、実はこの辺りが最近の我が国の社会的かつ経済的な苦戦の要因ではないかとも思っています。
願わくば我が国も、かつての様に進取の精神を取戻し、変革を恐れず、皆で新たに明日を築いていきたいものであると考えます。
「その場に留まりたいのならば走り続けなければならない」という、「鏡の国のアリス」の一節からの引用である「赤の女王仮説」を、生きて行く為の根幹となる動的平衡の本質として、我々も是非とも心して行きたいものです。