現在、日本でもインフレが進行して直近の消費者物価は、3.6%上昇し、日銀の物価目標の2%を超過しています。
それでも日銀によれば、「今の物価上昇は、資源高や円安等によるコストプッシュ・インフレで、金融緩和で投資・消費が活性化し、需要が高まる中での理想とする物価上昇ではないので、引続き強力な金融緩和策を継続する」と繰り返しています。
日銀が2013年に当時の安倍政権と政策協定を結び「2年でインフレ率2%を達成する」と宣言して早、10年になります。
その当時、所謂リフレ派(金融緩和優先派)が優勢となり、徹底した金融緩和を行えば「マネーの増加→金利低下→投資と消費の増加→経済成長→賃金増加→物価上昇」の好循環になり日本は、長期デフレから脱却できるとの考え方が主流となりました。
当時、そのような考え方は、実業界では一般的ではなかったので、大変な注目を浴び、リフレ派の学者の著した経済本は、ベストセラーとなり、そして、日銀総裁に就任した黒田氏は、世界的にも「アベノミクス」と共に脚光を浴び、金融界のスターとなりました。
この異次元緩和により、国内のインフレ期待が高まれば、物価上昇率が2%に近づいて来るとのことであったが、そもそも「日銀が2%を目標としていることを認識している国民は25%しかいない」との調査もあり、インフレ期待を押し上げることは当初から望み薄だったかも知れません。
個人的には、なぜ2%の物価目標が必要なのか、大いに疑問でした。少し調べてみましたが、確固たる根拠がある訳ではなさそうです。
ある海外のエコノミストによれば、「2%目標の歴史を振り返れば、それは作られた数字であり、FRBが1980年代後半にニュージーランドでの記者会見で出たもので、2%に科学的な裏付けはなく、米国のインフレ率と成長率の分布を見ると、インフレ率が4~5%の時に実質経済成長率がより速いペースとなっている」とのこと。
日本は、この20年以上成長しておらず、20年間の平均成長率は、わずか0.6%だそうですが、米国のそれは2~4%、EUは、2~3%であり、人口が減少し且つ賃金も低下、生産性も向上しない日本の現状から考えると、2%は過大でないかとの疑問が湧いて来ます。2%に拘るからこそ、金利を人為的に低下させ必要以上のマネーを市場に供給し、結果、通貨価値を低下させていないか、そろそろ検証すべき時期ではないかと思われます。
日銀は、10年経っても成果が出ない?政策を継続しており、流石に最近は、超低金利へ人為的に誘導する金融緩和政策と2%物価目標に異論が表明される様になって来ました。
著名な日銀ウォッチーの加藤東短リサーチ社長は、「日銀の異常な長期金利固体化策は、事実上の円安誘導策で、一時的な経済回復を図る策としては有効だが、これだけ長く続けると、副作用の方が大きくなる。昔、米国のルービン財務長官は、通貨高政策を取ったが、強いドルにより世界から安い輸入品が買え、物価抑制要因となる。それは、通貨高に堪える強い産業の育成に資するが、通貨安は、その逆で、赤字が増え国富が外国に安く買われ、且つ、国内産業も安い通貨に安住して努力を怠り、結果として、産業競争力が衰える」と評している。この他にも黒田総裁を公然と批判する国会議員も出てきているが、殆どは、忖度するか?他に有効な策がないとして、批判する人は少ない。
少し円高に戻ったとはいえ、通貨価値が下落し、国内資産の大バーゲンセール状態であり、現に日本の不動産がアジア等の富裕層に円安による割安感からかなり買われていると報道されています。
本来であれば、生産性を上げ、高付加価値製品や高い技術・サービスの輸出で経済成長を遂げるべきであるが、インバウンドなどに頼らざるを得ない現状は、先進国から非先進国へと転落しつつあるのではと感じざるを得ません。
緊急避難的な措置として始まった「異例の緩和策+2%の目標」は、そろそろ修正される時期ではないかと、(金融論の)素人ながら思っています。