物価が上がり始めています。
デフレ国 日本でも4月の消費者物価は、2%を超えるのではと話題になっています。
海外では、米国は、賃金の高騰とエネルギー価格上昇などで高いインフレが常態化し、欧州でも、ウクライナ危機に伴う経済制裁などでエネルギー不足が懸念され、インフレが昂進しています。
今回のインフレは、資源や食料等物そのものの価格が世界的に上昇しているのが主因ですが、日本では、円安により輸入物価上昇に拍車がかかっている形です。
現在の為替レートは、ドル建で約30年振りの円安を記録しているが、通貨の実質的な価値を他通貨と比較したベースでは、約50年振りの円安水準です。
その背景の一つとして、日本は、デフレが払拭できず、超低金利策を簡単には変更できないという事情があり、日米欧間の金利差が拡大、金利の高い国へ資金が移動することで、円安となっていると見做されています。
円安は、国益になるのかという批判説に対して、日銀は、「工場の海外移転などが進んだ現在でも、輸出し易くなるので国全体では、円安の方がメリットが大きい」と説明しているが、輸入企業や中小企業及び一般の消費者は、輸入物価上昇により負担増となるので、国全体で言うと、困る人の数の方が、喜ぶ人(輸出企業他)よりも多いというのが実情と評されています。
仮にそうだとしても、日本がデフレであることには変化はなく、「日銀の使命は、デフレから脱却し、2%の物価目標を達成し、企業も業績が上向き、個人は給料が上昇する理想的な経済社会を実現することであり、現在、一時的に円安だからと言って、金利を上げて円高誘導しても2%の物価目標は達成出来ない」というのが金融理論的には正論とされています。
しかし、実態は、日銀の10年近くに亘る超緩和策でもデフレは克服できず、超低金利の下で、国の借金は膨らみ(大量の国債発行を支えるために超低金利を維持する)、今やGDP比約260%にも上っています。
結局、輸入インフレに対処するために緩和策を修正し円安を阻止することも、超低金利を維持し国の借金を増やさないことや輸出振興のための円安を維持することもマイナス面が多いという極めて難しいジレンマに陥っているのではないか?
今、為替レートは、1ドル約130円程度ですが、購買力平価は、約95円なので(本来1ドル=95円の物が130円分買える)、海外からすれば、日本の諸資産は、バーゲンセールではないかとも思えるくらい安い(現に香港では日本旅行に備えて円現金への両替や日本の不動産投資の関心が高まっていると報道されている)。
今、為替専門家の中で一番怖いと言われているのは、「キャピタル・フライト」です。
日本の個人金融資産は、約2000兆円ありますが、その内の10%でも(将来、円の通貨価値が下落することを心配し)、米ドルなどの資産(米国株や米国債等)へシフトすれば、凄まじい円安となることが危惧されています。これだけの巨額のマネーが外貨へシフトすれば、最早、政府の為替介入や中央銀行の金利引き上げなどを実行しても蟷螂の斧です。
30年前の円安時には、原油価格は安定しており、日本経済は世界第2位と存在感もあったが、現在は、GDPでも中国に抜かれ、実質賃金は伸びず、30年間も成長しない国と地位が低下しています。
この様な状況下では、輸出振興のための「良い円安」ではなく、国富が買われ、個人生活のレベルが低下する「悪い円安」だと評価されても仕方がないのではないかと個人的には思っています。